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電気飛行機..

動力が完全に電動化された近距離移動用の電気飛行機、欧州航空機大手エアバスのハイブリッド小型機が、今年のパリ国際航空ショーをにぎわせている。

2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を半減させるという航空産業の目標には懐疑的な向きが多いが、彼らはそうした見方を払拭しようと必死だ。
イスラエルのスタートアップ企業、エビエーションは、年内の初飛行が予定されている9人乗りの電気飛行機「アリス」を披露した。
一方、エアバスサプライヤーサフラン(SAF.PA)とダヘルは、燃料タンクと電池の両方を積む近距離小型機「エコパルス」の模型を展示している。

欧州ではCO2排出量の削減を目指し、近く各国の経済相らが航空機燃料に対する免税措置の廃止を議論する予定だ。「フライト・シェイミング(空飛ぶ恥)」と呼ばれる、飛行機による不必要な移動を批判するSNS上の運動も経営者らにプレッシャーを与えており、電動飛行機への移行を後押ししている。
しかし、自動車と違って電気飛行機は、バッテリーを積んで空へ飛ばなければならない。そのため機体の大きさと航続距離が限定されてしまう。
サフランの研究・技術・イノベーション担当のステファン・キュエール氏は、「航空機にとって、バッテリーの重量による影響は桁違いだ」と語る。
エコパルスはエンジンで鼻先のプロペラと発電機を動かし、蓄電されたバッテリーから両翼のプロペラに電力を供給することで、最長数百キロのフライトで20─40%の燃料を節約できる。

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エコパルスはまだデザイン画の段階だが、滑らかなフォルムが自慢の「アリス」はル・ブルジェ空港の滑走路で見ることができた。開発したイスラエルのエビエーションは、今年中に初飛行を行う予定で、米政府の型式証明を2022年までに取得することを目指している。
アリスは1回の充電で高度3000メートル、時速444キロで1046キロの距離を飛べる。同社は航空ショーの会場で、マサチューセッツ州を拠点とする航空会社ケープエアーが10機以上の購入オプションを取得したと発表した。1機当たりの価格は400万ドル(約4億3000万円)だ。

<空飛ぶバッテリー>
シャープな横顔で、翼の両端にプロペラを搭載するアリスは、一から電気飛行機としてデザインしたと、エビエーションのオマー・バー・ヨヘイ最高経営責任者(CEO)は語る。
「端的に説明すると、巨大なバッテリーの側面に飛行機の絵を描いたということ」

伝統的なメーカーも、電気飛行機への関心も高めている。エンジンメーカーのロールスロイス(RR.L)は18日、アリスにモーターを供給している独シーメンス(SIEGn.DE)の航空宇宙部門を買収したと発表した。
エンジニアたちは、ハイブリッド飛行機により大きな希望を見いだしている。軽量化、小型化したジェットエンジンと、離陸時と上昇時に電気の力を使うハイブリッドは、燃料を30%節約できる。また、スラスターと電動プロペラで安定性が高まり、より流線形のフォルムにできることが可能で、空気抵抗を減らして燃料消費を軽減する。
エアショーの討論会に登壇した米ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX.N)のポール・エレメンコ最高技術責任者(CTO)は、「そうなれば、経済性・持続可能性はこれまでの飛行機よりもバスのそれに近づくだろう」と語った。
金融大手のUBSは、環境に優しい航空機技術(グリーン・アビエーション)の需要は2040年までに1780億ドルになると予測している。
エアバスは次世代旅客機にハイブリッド技術を検討しているが、2030年代までに座席数200のハイブリッド飛行機がA320に取って代わる可能性は低い。

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航空産業のCO2排出は世界全体の2.5%ほどだが、特にアジアで中間層が台頭していることにより、増加が予測されている。
業界ではハイブリッド機などが主流になるまでの対策として、航空会社が排出枠を購入し、オフセットするCORSIAプログラムの導入を始めている。

<解決は遠い未来か>
航空産業の成長を阻害せず、CO2排出量を2005年比で半減するのは簡単ではない。
ボーイング(BA.N)のグレッグ・ヒスロップCTOは、「われわれは、どうやってそれが成し遂げられるのかまだ分からない」と語る。

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業界の首脳たちにとって、答えが「フライト数の削減」でないことだけは確かだ。
ロールスロイスのポール・スタインCTOは、「航空産業を成長させ、かつ持続可能にしなければならない」、「移動を減らすことを提案する人もいるが、それでは先の見通しが真っ暗だ」と、討論会で発言した。
ブリュッセルを拠点とする業界団体「エアラインズ・フォー・ヨーロッパ」は、「航空業界への課税は解決にならない」との声明を発表。一方、環境保護団体グリーンピースで交通や輸送の問題に取り組むサラ・ファイヨル氏は、課税や規制は必要だと主張する。
「環境と気候の非常事態に直面しているときに、数十年先に実現するかどうか分からない技術的解決策を待っているわけにはいかない」
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)
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