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イモを燃料に..


イモを燃料に発電する芋発電 [近畿大学

芋を原料に発電する。このユニークなアイデアを提唱、実践するのが近畿大学の鈴木高広教授だ。
芋の主成分はデンプンだが、デンプンは燃焼性がよく、かつ燃焼時に有害物質をほとんど排出しないという特徴がある。さらに、栽培に手間がかからず、生産効率もいい。

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2011年12月、鈴木教授は芋(サツマイモ)のチップを燃料とした実験用の火力発電装置(芋発電機)を民間企業と共同開発した。開発した装置は、蒸気ボイラー式とスターリングエンジン式との2種類がある。

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蒸気ボイラー式は、芋を燃焼して得た水蒸気で動くピストンを回転運動に変換し、自動車用発電機を回転させて発生させた直流電流を100Vの交流電流に変換する。蒸気ボイラー式の芋発電機の最大出力は700Wでテレビ、パソコンなどに使用できる。

スターリングエンジンは、シリンダー内に閉じ込めたガスを加熱・冷却することでガスの膨張・収縮を促し、それにより発生する力でピストンを動かすエンジンである。そこでスターリングエンジン式芋発電機は、芋の燃焼によりヘリウムガスを加熱・膨張させ、次にそのヘリウムガスを水で冷却して収縮させる。この膨張・収縮の繰返しによるヘリウムガスの体積変化を利用してピストンを動かす。実験用のスターリングエンジン式芋発電機の最大出力は1kWであり、実験では720Wの電力を得た。

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これらの実験機の目的は、芋発電できることの確認はさることながら、芋チップが、現状の火力発電で用いられるバイオマス燃料(木質チップ)の代替となり得ることの証明でもある。現在、電力会社の火力発電では石炭と混ぜて木質チップが用いられるが、2種類の芋発電機の実験を通じて、乾燥した芋チップでも発熱量や発電能力はほぼ同等であることがわかった(下図)。しかも芋チップが、海外から購入される木質チップの代替となれば、国内農業支援の一助になる。つまり、燃料用の芋を栽培すれば食用の農産物を生産する農家にとっては収入源が増えることにもなるわけだ。

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乾燥した芋チップで発電を研究・開発してきた鈴木教授は、火力発電の燃料以外の利用としてガス燃料化の開発を進めている。 2013年5月、鈴木教授は、さつま芋の発酵から得られるメタンガスを抽出してガス発電に利用することに着目した。チップ化よりもメタンガスのほうが発電の燃料として利用しやすく、ガス燃料とすれば芋のもつエネルギーの80%を回収できる。

簡易な仕組みのため、家庭でも廃熱などを利用すれば安価につくれるという。また、仮に芋のエネルギーの発電変換効率を40%とした場合、1軒で20kgの芋があれば1日分の消費電力に相当する10kWhの発電ができるという。

鈴木教授によれば、小型のメタンガス発電機の燃料に応用できるほか、企業などが大型のメタンガス生成装置を設ければ、大量発電・給湯機の燃料としても活用できるとしている。鈴木教授はその実証試験をしたいと意欲的だ。
<J-Net21より>